第1回ベトナムレポート

IGLOCAL RESOURCE CO.,LTD General Director Nguyen Dinh Phuc 氏

■ レポート

 みなさん、はじめましてベトナムで人材企業HRnaviの代表をしております、Phuc(フク)です。ヒューマンキャピタル研究所さんと3年前からご縁があって、現在HCi-AS検査のベトナム総代理店を務めています。今回、ベトナムと日本を比較して、労働環境をテーマに情報提供したいと思います。
 簡単に私の自己紹介をします。1977年に生まれ。国費留学で日本に行き、2004年3月に京都大学大学院防災研究(災害リスクマネジメント)を卒業しました。京セラグループのソフトウエアベンダーでの勤務を経て、2006年にベトナムに戻り2010年より iGlocal Resourceという、ベトナムに進出している日系企業を主な取引先として、人材紹介業を営んでいます。
 私はおかげさまで、日本でしっかり勉強することができましたので、ベトナムと日本の良い面・悪い面を冷静に判断できると思っています。日本はすべてにおいて、ルールが作られ、システマティックに社会が動きますが、開発途上国のベトナムではそのときそのときで決めないといけなくて、法則がないことも多いです。例えば、日本では4月に新卒者が一斉に就職しますが、ベトナムではこの文化がなく、各大学の卒業時期がまちまちで、各企業の採用時期もバラバラです。よって、日本では新卒者採用に関するビジネスがとても大きいのに対して、ベトナムでは経験者を採用する傾向が強く、新卒者向けのビジネスが日本と比較してとても小さいです。

それから、ほぼ同じ給料で新卒として企業に入って年々に上がっていき、ある年齢に達したらおおよその年収が見込まれるというのが日本の通例です。しかし、ベトナムでは新卒でも、高卒では2万円から、優秀な大学卒業者だと4万円からスタート、そして労働者で一生終えたら、月給は頑張っても5万円がマックス。一方ホワイトカラーで頑張っていれば、日本と変わらない給料を得る人もいます。(参照 図1・図2)

 つまり、とても所得の幅が広いのがベトナムです。それに紐づいて、生活水準そのものも格差が大きいです。片や銀座と変わらない質を持っているレストランもあれば、ランチ一食100円の地場の食堂もあります。
 住居も同じく、外国人が住めるようなサービスアパートメントは月額40万円。個人が運営している高級マンションの家賃は18万円ですが、末端の労働者では月額1万円のぼろ部屋を借りて3~4人で生活するような人が一般的です。そのためかもしれませんが、公共交通機関はとても安く、バスだと片道30円、長距離夜間バスでホーチミン~ニャチャン(東京~大阪ぐらい)だと1000円ぐらいです。
 ですから頑張ればとてもよい生活もできるが、頑張らなくても食うには困らない(死なない)国なので、ある意味では裕福かもしれません。
 ベトナムに留学に来たり、仕事で赴任した日本人の中には戸惑いもあり、意外とうまくやれていない人が多いのではないかと思います。それもいろいろな理由があります。まず、日本は単一民族で、沖縄にいようが北海道にいようが、日本人だとだいたい同じ常識を持っているはずです。海外に飛び出さない限り、お互いの考え方が違っていることを強く意識することはありません。それから、日本では考え方を学習する仕組みがいくつもあります。社内の飲み会、運動会、朝礼のスピーチ、就活の説明会、エントリーシートの作成などなどです。
 これらの活動はベトナムでは皆無と言っても大げさではありません。ベトナムでは就活は通年なので、よく準備されるような説明会は少ない。願書は履歴書と職務経歴書だけで、エントリーシートが要求される会社はあまりみられない。会社生活では日系企業でない限り、朝礼をしていませんし、当然ながらためになるスピーチもありません。運動会もありません。それから、私生活を大事にしている考え方を持っているので、みんな一緒の飲み会はたまには行くのですが、1次会で終わることが多いので、深い話はできないことがほとんどです。また、2次会があったとしても、カラオケボックスですので、本当の意味で遊んで終わってしまいます。
 以上が、ベトナムの基本的な労働事情です。

インサイト No.44
2015年12月18日

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