ワイキューブの秘密〜採用ビジネスの表と裏〜

 さる2月20日開催のヒューマンキャピタル勉強会は、元ワイキューブ代表で、現在は境目研究家・出版社ぼくら社編集長等の肩書きをお持ちの安田佳生氏を講師にお招きしました。安田氏といえば、2006年出版の「千円札は拾うな」(サンマーク出版)が話題をよびましたが、2011年に40億円の負債を抱え採用コンサル会社ワイキューブを民事再生するに至りました。ヒューマンキャピタル研究所も近い業界とうい事で、安田氏にはHCi-ASの代理店も受けて頂き交流もありました。当日は、ワイキューブ時代を彷彿とさせる採用ノウハウや、倒産への経緯も赤裸々に語って頂きました。では、当日の抜粋をレポート致します。

元ワイキューブ代表 現ぼくら社編集長 兼 境目研究家 安田 佳生 氏

■ 講 演

【はじめに】

 こんにちは、安田といいます。ワイキューブの社長を20年やっていた時は、どういう会社が儲かるか?優秀な人材とは?というお金につながる経営者として奔走していました。それに疲れた現在、「境目研究家」として友達と親友の境目とは?とか、根性と努力の境目とは?等、多数のグレーゾーンを研究しています。

【採用コンサル会社ワイキューブ】

 どうも世間ではワイキューブという会社は知らないが、安田が会社を倒産させたということは有名みたいです。丁度、東日本大震災前日に民事再生を決断しました。負債43億を免除してもらう為、新会社に事業移管、私が責任を取って社長を辞めました。どんな会社だったかというと。人材業、採用業をやっていた会社という程度しかご存じないでしょうね。新卒採用に特化した会社でした。現在、日本全国の法人が4~500万社ある中、稼働している会社はおよそ2~300万社。その約1%超が採用をしている会社と推測して、全国で約18,000社。この潜在ターゲットに対し私が考えたのは、採用も求人媒体に広告を出すことがハードだとしたら、ソフト(ノウハウ)の方を売ろうという事でした。

【マーケットと戦略】

 私の人生を通しての特徴ですが、顕在化して既にあるマーケットに全然興味がありません。新卒採用をやらない、採用を全く考えていない企業(やはり中小企業)にだけ営業に行く。私がへそ曲がりということもありますが、採用サポート会社、ご存知のリクルートを頂点に物凄い数があり、毎年18,000社を取り合っている。何千人と営業マンがいて、朝から夜まで営業をしている。そこに飛び込んで仕事を取るというのは尋常な事じゃ出来ないわけです。一方、よく考えると100社に1社も採用をしていないわけで、99%は全くガラガラの市場。そこには全く誰も営業を仕掛けていない。「採用しない」という企業達ですが、これらの企業に「新卒採用をやりましょう。」と言わす事が出来たら『仕事は確実に弊社に来るよな』と思えた。「人間は自分が欲しい物が分かっているか?」と言うとそうでもない。「まだ本人の気付いていないことを売ろうじゃないか。」それが基本的な戦略でした。

【本当にこれで優秀な人材を採用できる1~新卒採用ノウハウ】

 ターゲットはもちろん、リクルートが行かない中小企業です。1・基本的にそこに入社したいという学生はいない。2・面接でいきなり事業の話をしても意味が無い。 3・先に仕事の厳しい話をするのはやめる。
 まず重要なのは入社意識を上げること。~採用場面ではこの説明順を入れ替えたことで成果が出ました。(当時は衝撃的な事でした。) 4・会社説明会に社長を引っ張り出す。~大企業に勝てるものがあるとしたら、未来しかない。未来を語るのは社長しかいない。「弊社は今こうだけど未来はこうしていく。こうなっていく。それを一緒にやってくれる人が欲しい。」と社長に語ってもらう。 5・学生は待遇を重視するが、人間関係や社風といったところも非常に重視する傾向がある。 6・人事が「我が社は非常に風通しの良い社風です。」みたいなことを話すと台無し。~いかに話さずに、これを感じさせるか、感じ取ってもらうか、ということが大切。 7・会社説明会で笑いをとる。~仕事が楽しいと感じてもらうのに一番なのは笑わせること。会社説明会で笑いを取ると、社風は何一つ変わってないのにすごく楽しそうな会社だとなる。社長との親近感を感じてもらうなら、社長が話した後に「うちの社長の話は長くてすみません」など、社長に突っ込みを入れると「社長に突っ込みまで入れる会社なんだ!」となる。 8・「うちの会社はこういう良いところがあるが、こういうところが弱い。」と等身大で語る。~「正直な会社だな!」と感じてもらえる。 9・中小企業は欲しい人材が明確で、元気で、頭が良く、バイタリティーがあり、根性があり、行動力があり、スピードがあり、と色々なものを欲張って兼ね備えた「男性」を採用したがる。そんな、スーパーマンみたいな学生は、大手で押さえられて来ません。私の感じでは、女性の方が戦力としては優秀です。~就職活動生を四つに分けて考えてみる。「優秀な男性」、「優秀ではない男性」、「優秀な女性」、「優秀ではない女性」がいるとし、そこで「優秀な男性」を採用出来ないとすると「優秀ではない男性」を採用してしまう。「優秀ではない男性」が次の新入社員の先輩になる。3年後「優秀ではない集団」になってしまう。つまり優秀ではない人材を持たないことが大事で、それなら「優秀な女性」を採用する。まず、女性を採用する。「うちは女性はいらない」など単純なことを言うのは、一手先しか考えてないから。三手先、四手先を考え実際に「優秀な女性」の先輩がいて、その社員を見て「優秀な男性」が入社して来ることが、一番手っ取り早く「優秀な男性」を採用する秘訣です。  
 

【本当にこれで優秀な人を採用できる2~学生を口説くためのノウハウ】

 1・学生を口説くための人材を育てる。 2・社員の口説き力をアップするリクルーターというシステムを作る。~人はそんなに急に口説く力なんて上がらないもの。研修を行っていく。 3・社長が必ずしも物凄く人を口説くのが上手とか、ビジョンを語るのが上手とは限らない。~本業でないのですから当然口説きの下手な人はいるので、社長も研修する。
 4・社長のスーツを変える。~銀座に行く格好の社長を会社説明会に行く格好に変える。
 5・変な髪形を変える。~40~50代の社長で変な髪型をしている人は、だいたい人の話しを聞かない人です。人の話しを聞かないから自分が良いと思っている方向に偏っていく。実際に社長がファッションを変えたら、いい人材が採用できる。 6・採用には先輩と後輩の繋がりがあると認識する。~欲しい人材には熱心にアプローチしますが、要らないと思ったら態度に出てしまい冷たくなる。すると「あの会社すごい対応悪かった。」みたいな噂が広がってしまいます。
 7・出来る限り落とすのにも時間をかける。~当然落とされると「あの会社は素晴らしい。」とは普通話さないので、落とし方に気を付け「何故あなたとうちの会社はミスマッチになったのか、しかしあなたのこういう所はすごく素晴らしい、たまたまうちの会社には合わないけれども他の会社には絶対に合う。」と言ってあげると、次年度その受験者がOBとなり「あの会社良いよ。」と伝えていってくれます。 8・とにかく礼儀正しく落としてあげないといけない。 9・会社説明会は唯一と言っても過言ではないくらい学生が1~2時間黙って真剣風に話を聴き続けてくれる数少ない機会。 10・不親切にしない。

【会社は人材で決まる】

 人材にお金を掛けない社長はいるのですが、すると何年経っても会社は大きくならない。「仕事があるから人を採用するのではなく、採用した人が仕事を生む。こういう流れにしましょう。」と言うと、納得しても
らい「君に仕事を頼みたい」と、依頼をされるのですが、次は「金が無い」となる。「今まで採用にお金を掛けた事がない。紹介(ハローワーク)ならタダ」人材会社だと一人採用するのに100~200万円。「今まで0円なのに100万円も払うのか!?」と思うわけです。「社長、一人採用すると給料が安くても3~400万円。社会保険も入らなければならないし、500万円はかかりますよね。その人達が10年間働いたら5,000万円です。採用コストが0円だと5,000万円の出費です。入口で100万円掛けたら5,100万円です。5,000万円で分からない人材を採用するか、5,100万円の投資で何十人の中から優秀な人材を採用するのとどちらがお得ですか?」0と100を比べるから0円という事になるのですが、5,000万円の役に立つのか選べない採用と、5,100万円の選べる採用だったらどう考えても選べる採用がお得という事になります。0と100を比べてはいけないのです。

 【潜在マーケットにはちょっとした工夫がいる】
 潜在マーケットは、営業力でこじ開けても開かない。とことん電話営業をしても、それでは潜在マーケットでは物は売れない。先方が「なるほど!」と自ら気が付いていけるような情報の種を撒いていくのが大事
で、相手に相手が欲しい物を見せてあげる事が重要です。最近の仕事は、潜在マーケットを掘り出すお手伝いや、お金を掛けずにメディアに取り上げられる仕組みのお手伝い、ミッションやビジョンを面白くしようとしたりしています。では、お時間になりました。私の話は以上です。皆さん有難うございました。
 では、お時間になりました。私の話は以上です。皆さん有難うございました。

インサイト No.38
2014年5月20日

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