人事担当者のための講座〜メンタルヘルスを考える(2)〜
株式会社 ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進
■ 連載 人事担当者のための講座
第14回 メンタルヘルスを考える(2) ーケースメソッドー
前回の理論編をうけて、今回はその内容をケースによって示す。既に当研究所の出力テスト結果の中に記述されているケースから、メンタルヘルスについて特徴的なものを4例抽出してみた。
これによってそのメカニズムが具体的に理解されるであろう。紙面の都合により今回は2例に止めたが、残りのケースについては次の機会に提示する予定である。
【ケース A】-指示に忠実だが、内閉化的タイプ-
1.価値観・行動基準
上司の指示には忠実だが、全体として非常に慎重で、自分を表に出さず、何か問題が起きても自分の胸におさめて他に表現しない傾向が強い。
常に他人を気にして、その流れに反しないように行動する。
以上のように「自己防衛」の構えの強さが目立つケースである。
2.行動パターン
(1)内気なタイプで何事にも後々気にする心配性である。全体として引っ込み思案な行動が目立つ。
(2)上司の指示には忠実だが、必ずしも積極的なものではない。しかし上司の影響力は大きい。
(3)あれこれ迷うことが多く自己決定ができない。自分の考えをまとめられないのである。
(4)前にふれたが自己抑制が強く、不満が残るようで「情緒不安定」となりやすい。
3.面接時のポイント
(1)全体として暗いイメージが感じられる。表現もスムーズになされないであろう。一見慎重のように見えるが、考えをまとめられないことが原因である。
(2)特に対人関係を中心に面接を掘り下げてみたい。自己抑制の強いタイプだけに、本音を知ることがポイントになるであろう。特に不満の内容などを・・・。
4.指導育成のポイント
(1)先ず適性配置の上で、対人交流の少ない仕事で、上司の直接的指示を得られやすい条件であることが望ましいであろう。
(2)但しテンポの速い上司は避けたい。交流のギャップが大きくなる。
(3)入社時の過重負担は避けたい。多少の失敗にクヨクヨせずに対処するよう仕向ける。
(4)目立たない人だけに見落しやすいタイプである。積極的に働きかけることが必要であろう。
【ケース B】 -不満を自分でつくるスネ者-
1.価値観・行動基準
メンタルヘルスでの特徴的なケース。何ごとに対しても疑い深く、ひねくれた受けとめ方をする。
感情的で他から支配されることは大嫌い。その上、不平不満の原因は「誰かのせい」にする傾向を
持っている。しかし、一面では広い関心とそれなりの自信をもち鋭いケチをつけることも多い。
「唯我独尊」のタイプである。
2.行動パターン
(1)見ること聞くこと全てに、常に不平不満をつくるケースだ。自分の気にくわないことが多いタイプで、人が何か話をしていると「自分の悪口を・・・?」という調子である。
(2)その原因を先にふれたが、「誰かのせい」にしてしまう人で適応は決してよくない。
(3)時には他に対して陰で悪さをすることも少なくないので、一層困るケースである。
(4)しかし、一面で自分の理解者を求めている傾向があり、その方法が分かっていない。しかし、そういう人を得られたとしても長続きしないことが多いであろう。
3.面接時のポイント
(1)何となく警戒的でオープンな明るさはみられない。
(2)広い関心とレベルをもっており、それなりに応答はする。何をやりたいのかその自信があることを確かめること。
(3)又、先にふれた「不平不満」についても質問してみたい。その原因を突きとめたい。おそらく誰かのせいにするだろうが・・・。
(4)深く付き合っている友人の存在をつかんでおきたい。長く続いているのであろうかのチェックを次の育成ポイントとしたい。
4.指導育成のポイント
(1)先にふれたが、自分なりにやってみたい事を確認することが第一。チームワークか、単独かということも重要なテーマとなる。
(2)人前で恥をかくようなことを極端に嫌うので注意しておきたい。
(3)不満の多い人だけに、それを解決するにはどうしたらよいかをしっかり質してみることだ。指導上のキーポイントになる。
(4)いろいろ気を遣って、なかなか発言しないこともあろう。或は「こう言っておくほかない」ということで、本心とは遠いことを言ったりする点にも注意したい。難しい面接となる。
インサイト No.15
2008年2月1日