人事担当者のための「面接講座」〜今、なぜ「面接力なのか」〜
株式会社ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進
■ 連載 人事担当者のための「面接講座」
第1回 今、なぜ「面接力」なのか
問題提起の基本的な発想は「採用活動」のすべてであり、更に企業における「採用マネジメント」で、コストではないという点だ。採用活動の失敗は、すぐれた人材獲得の失敗であり、若干のタイム・ラグはあるものの企業の損失は大きい。逆にその成功は企業にとって、時には「起死回生」につながる人材を得るという、大きな利益を産み出す。
コストと利益の関係がマネジメントの原理であるとすれば、まさに採用活動はそのものである。
このマネジメント意識を採用担当者の姿勢の軸に据えることが、成功への第一歩であるべきだ。
以上の点は自明のことではあるが、敢えて強調しておきたい。
さて採用活動全体の中で、どの節目が成功を決めるポイントになるかを考えてみる。まずその投資分野を大きく二つに分けてみよう。
(1)人材の獲得分野
(2)面接選択分野
(1)は応募者の母集団の構築であり、(2)は、必要人材能力の選択である。この活動には書類審査などを含めて「面接」がその中核となることはいうまでもない。
採用マネジメントの目標は、必要な人材の獲得にあり面接はその決定の場となる。今、買手市場にあって、母集団構築と言うと量的な活動より、必要人材の選抜という「面接力」への投資に力点をおくべきであろう。面接の成功なくして、採用活動の成功はあり得ない。これは買手、売手市場を越えるテーマでもある。
問題は、マネジメント・サイクル中の評価の部分である。面接においてもこの点はボトルネックとなっているところでもある。
次にその実例を紹介しておきたい。某企業では入社5年を経た在籍者の業績・能力の評価を実施、その結果を「採用部門」にフィードバックしている。目的はその年度の入社社員の現状と、当時の面接活動の結果とを照合することによって、面接そのものを見直すことにある。このプロジェクトはトップ指示によるものであったことを付記しておきたい。
ここで、当研究所でまとめたデータを「面接力」評価の為の一資料として示してみたい。テーマは「面接結果と客観テストとのズレ」である。資料として前者は「面接記録表」、後者は「HCI-AS」を使用した。特に参加企業の面接記録の結果は、個々の事例分析に貴重なデータとして活用された。
この二資料の照合が研究の核心であり、そのズレが面接力評価の一視点となるという仮説である。又、事例の中の面接者間で、採否の合意度の低いものは除いてある。
事例の総数は、大卒者男子、114名。参加企業は6社となった。
次表にその結果を示す。
次に若干の集約を示しておく。
(1)分類Aが全体の過半数に達している。この中に、ASの「結論4」が5%含まれていることに注目したい。面接力の甘さが指摘されるであろう。
(2)分類Bは、潜在的能力の見逃しと考えられる。印象的判断が相手の全体像を方向づける結果になったのではなかろうか。
(3)分類Cは、先にのべた面接者間の採否決定合意度の低いケースで全体から除外したものである。合意度の低下原因の分析が課題となるであろう。
以上、ごく簡単に要約してみた。個々の事例の解説まではいかなかったが、面接力評価の一視点として頂きたい。
インサイト復刻版 No.1
2003年9月18日