人事担当者のための講座〜「モラトリアム群」の採用(3)〜
株式会社ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進
■ 連載 人事担当者のための講座
第12回 「モラトリアム群」の採用(3) ーその定性的能力の把握ー
今回でこのテーマを一応の締め括りとしたい。最近の新聞紙上に「フリーター200万人割れ」と大きく報道されていた。前年比14万人減である。しかし、フリーターの定義では、15歳〜34歳の男女ということであるから、35歳以上の年長組は入っていない。
就職氷河期世代が、今35歳なのだ。しかも年長期の人口は増加しつつある。又、この年齢はキャリア形成のポイントでもある。フリーター減といっても安心してはいられない。
さて、前回はモラトリアム群と新卒群(母集団113名)をABCDの4つの採用基準によって対比してみた、差違は8%台に止まった。
今回は、その基準「B+C」のケースの「定性的能力」の内容を明らかにしてみることがテーマである。ケースの抽出は「B+C」の中で、出現頻度の高いものを中心に選択してある。次の4ケースにまとめてみた。
以上のケースについて、次に「対比」のポイントを押さえておきたい。
(1)モラトリアム群
2ケースとも社会的対人面での交流が消極的であるが、「ケース1」は内面的資質、人柄にすぐれ情緒的にも安定していることが注目される。
採用基準は共に「C」にランクされている。
(2)新卒群
社会的対応は明るく良好だが、「ケース4」では人間的未熟性が強い。仕事的好悪がはっきりしている点は共通している。
採用基準はケース3では「B・C」と二分。ケース4は「C」にランクされている。
モラトリアム群ではすべて「C・避けたい」となった。面接対応の苦手な点もあろうが、せめてケース1を「B」としたいところだ。潜在的能力は、その人間性からみて成長性は高いであろう。
新卒群は2分されたがこれは妥当であろう。いずれにしても「定性的内容」でみる限り、能力差は卒群で仕事の好悪には注目しておきたいところである。
前者の対人能力の違いは、ケース1、2で対比すれば明らかだ。後者では好悪の内容を掘り下げ、仕事の適性とやり方を探ることは不可欠であろう。第2新卒を生む温床ともなるからだ。
次の2つの図は最近の調査資料である。
上図は能力さえあれば、という企業の本音だ。下図は第2新卒への懸念材料だ。3年退職の損失は1,600万円だ。特に年長組の仕事とのマッチングは今後の大きなテーマとなるだろう。
さて、前回「仕事につけない理由」という調査表を紹介した。段トツに高い項目は、「病気・ケガ」であった。だが「能力に自信ない」「希望職なし」「探したが見つからず」の三項目をトータルすると、15%に迫り、「病気・ケガ」を大きく超えているのだ。ここでも仕事とのマッチングはバカにならないことが分かる。面接で掘り下げるテーマであろう。そしてその軸ともなることは「人間性」の把握をしっかりやることに尽きる。そして定性的能力の把握と、会社が必要とすることとのマッチングが、決め手になることは確かなのだ。
インサイト No.13
2007年8月1日