ベンチャー企業におけるグループ採用と育成
さる6月13日(水)、本年第2回目のお客様向け講演会を開催致しました。講師は、写真のネット販売を展開するベンチャー企業 株式会社CCCフォトライフラボ代表取締役社長白砂晃氏にお願い致しました。2002年に写真をインターネットで販売する会社を創業。2007年にスタートした一般ランナーも参加する大規模都市型の東京マラソンや写真ブームに乗って、業績も急成長。業績の拡大に伴い新卒採用も積極的に展開されています。
ただ、急成長ベンチャーには付きものの課題も多く、白砂社長が陣頭指揮に立ち業績には欠かせない人材採用を積極展開されています。当日は、そんな採用の中でも、いろいろ工夫された面接に関して、具体的にお話し頂きました。レポート致します。
株式会社CCCフォトライフラボ 代表取締役社長 白砂 晃 氏
■ 講 演
みなさんこんにちは、CCCフォトライフラボの白砂です。今日はヒューマキャピタル研究所さんから依頼のあった、ベンチャーの当社が重要視している「人材採用」、特に面接のあたりのお話をさせて頂きます。
【採用面接のポイント1】
当社では「コミュニケーションシート」というものを書いてもらっていて、その人の人生において何が起こったのか
というのを確認しています。面接の際のネタ用です。私の最終面接では使うことはなくて、どちらかというと一次面
接、二次面接における人事部長、スタッフメンバーとの会話を作るツールですね。
最終面接では、一次・二次で面接したメンバーのことも当然頭に入っているので、面接した彼ら彼女たちがどういう
フェーズにいるのか、経営戦略を理解できているのか、業務についての理解はあるのか、人生に対してどれくらい深い
ところまで考えているのか、哲学は何かというところまで頭を働かせて、彼らが面接したときに聞き出せたのか聞き出
せなかったのか。その上で、面接に来ている学生たちの人生哲学だったりどこへ向かおうとしているのかというのを
チェックしています。基本的には今までの面接で聞いていることは聞かないようにしていることと、当たり前のことは
あまり聞きません。当たり前のことを聞くと当たり前の答えしか返ってこないのでそれでは意味がない。後は一つ一つ
の表情も見ています。入ってきた瞬間、挨拶した瞬間に相手のことを読み取る。目の動きとか立ち居振る舞い、髪型、
ネクタイ一つとってもそうですしシャツもそうですし、ちゃんと洗えているのか、どんなブランドを着ているのだろう
とか、持ってるバッグは何だろうとか。そんなこと言っているからみんな黒いスーツを着てくるようになってしまうん
ですが。面接に基本的には私服で来るようにと伝えています。なるべくその人の生の情報を多くするためにも説明会の
ときからリクルートスーツ禁止にしています。自分を表現してもらうというか、ベンチャー企業そのものなので、社会
と同じである必要はないというのが当社のポリシーです。
【採用面接のポイント2】
面接では本を読んでいるかどうか、これも結構聞いています。最近はこれも聞いてはいけないと言われるようなんですが、本は確実に聞きます。本を読まないという人が多いんですけど、そういう人が社会人になって本を読むようになるかといったらなりません。当社では社会人3原則といって、「本を読め」「新聞を読め」「人と会え」というのを必ず言っています。その3つが早くできるようになりなさいと言っています。習慣として普段本を読んでいないとなかなか克服できるようにならないので、そこは必ず言います。本を読んでいるかと聞いて、○○を読んでますと返ってくると、必ずそのストーリーを話してもらうようにしています。そうするとその人の頭の中のストーリー構成っていうのが見えてきて、頭がいいなとか、論理力があるなとか、だいたいここでわかります。
新聞を読んでいるかどうか。これは同じニュースを見たときにそこからちゃんと考える癖がついているかということを確認していています。そのニュースの中で何が気になるのかという切り口で、その人の心の奥底を私なりに確認するようにしています。新聞も基本的にはストーリーになっているので、継続して読んでいないとつまらないですし理解ができない。それに関して興味を持とうとしているのか、その人の興味レベルの話をすることが多いです。
【社長の私自らが率先して関わる】
仕事に対する価値観というのは結構重視していて、仕事って仕えることではなくて志すことだよね、っていうのを必ず説明会で話しています。その上でじゃああなたの志はなんなの?とか、あなたが活きる会社はなんなの?というのを結構踏み込んで聞いています。女性はよく考えているケースが多いですが、男性はほとんど答えが出てきません。
中途採用は基本的に担当してないのですが、転職する人は何かに我慢ができなくて他の会社に行くっていうのが多いと思います。最近、我慢できない人が多すぎますよね。基本的に仕事って何やっても変わらないよって、私は言っているんです。どんな仕事でも世の中を作っていくっていう行為は一切変わらないから。机一つ作るにしても、いろいろな材料がある中から一つを選んで設計して想いを形にして出来ているわけで、その想いを込められるか込められないかの話だよね、という話はいつもしています。そういう意味では中途採用の場合は何かを捨てて来ていて、パワハラだとかセクハラだとかが原因だというのは仕方ないかもしれません。なので中途に関してはグループ会社の裁量に任せています。新卒に関しては完全に真っ白なキャンバスに絵を描くのと一緒なので、私も結構入り込んで彼ら彼女たちがどういう人生を送るのか、その中で自分もいい影響を与えられるなら与えたいと思いますし、自分にもいい影響をもらえるものならもらいたいと思います。一緒になってできるチームを作っているというのが現状です。
新卒面接のときは採用した後のチーム構成を考えていて、全員がもの凄く出来るメンバーばかりだと逆にギスギスしてしまうので、どちらかというとバランスよく採用することを考えています。このくらいのレベルで志があるならいいんじゃないかとか、能力が高くて忠誠心も高い人ってあまりいないので、能力はそれほど高くはなくても忠誠心は高そうだなとか、そんな感じでバランスの良いチーム構成を考えています。
今は学生に有利な市場になっていますが、採用力の強い大手企業に採用でどうやって勝つかは、頭の使いどころかなと思います。当社でやっているのは、私自身が採用選考にも参加して個々との関係性を築くというのを重要視して行っています。やっぱり小さい会社なので、その関係性がきちっとできた上で入社すると全然違います。例えば、会社の不満を言っているメンバーも社内には当然いるじゃないですか、でも自分の会社の不満を言うことって自分を否定しているのと一緒だよって伝えています。その前にセルフチェックを必ずしなさいと。その他にも入社する前に伝えておくべきことを様々な場所を設けて理解してもらえるようにしています。勉強会やイベントとか、あとは社員会というのを必ず月1回やっていますので、そこに呼んで会社のことを理解してもらうとか、そういったことをやっています。
【母集団形成について】
大手企業と同じことをやろうとすると必ず負けるので、大手がやらなくて自分たちでできそうなことを仕掛けています。例えば学内説明会というのを大学と共同で開催しています。これは私がいろいろな大学
の授業を受け持っているんですが、授業の一環で入り込んでそこから採用につなげるといったことをやっています。授業はベンチャー企業発展論とかスポーツマネジメントとか。いくつかの大学と仲良くさせて
もらって授業の一コマに呼んでもらうというようなことをここ何年かは繰り返し行っています。学校の先生から声をかけられたら基本的にはお断りしません。定期的に行う講座も多いですし、そこから採用につながるケースというのも非常に多いです。私の話というのをまだ何も手つかずの状態の1年生のころとかに聞いてもらえるので、その授業でアルバイトの募集をかけちゃうんです。そこから接点を持って入社してもらうということもあります。学生との接点を作って、なおかつ賢いなと思った子には結構いろいろな特別プランを用意したりして、ずっとリテンションを図っています。別の会社を選んだとしても、何かあると必ず声をかけてうちの会社のいろんなイベントに参加してもらう、というようなこともやっています。
あとは今年から始めたんですが、ある起業家養成講座に来ている学生たちを集めて「社長飯」ということで定期的に、私と一緒にご飯を食べたりしています。だいたい8名くらい参加するんですが、話をしているとそれぞれのパーソナリティが見えてきたりするので、この子は伸びそうだなと思ったらもう少し深く関係性を持つとか、だいたいその場でフェイスブックを交換してこちらから情報発信をしてもう一度会うというようなことを繰り返しています。
ナビサイトは普通に展開していますが、最近は出稿を抑え気味にしています。というのは、大手のナビサイトから応募があっても、正直あまり要件にマッチングする学生が来なくてこちらの手間ばかりかかってしまうからです。最近はどちらかと言うとコアな学生を集めている会社と仲良くさせてもらっていて、そこから選考に進むというのが多いですね。そのコアな子たちは採用イベントで知り合うと友達を連れて我々の会社を訪問してくれたりするので、訪問してもらう機会を増やして一般の子も採用するというのを今は行っています。
今日お話した内容は、ベンチャーの当社が少し特殊かもしれません。ただ、一番大事だと考えているのが、採用は経営の根幹業務だと私は考えています。なので、私は結構な時間を割いているのと、採用部門責任者の人選は最重要事項と位置づけています。少しでもみなさんの参考になれば幸いです。
インサイト No.55
2018年9月20日