人事担当者のための講座〜採用諸資料と「OJT」について(2)〜
株式会社 ヒューマンキャピタル研究所 主任研究員 北山 進
■ 連載 人事担当者のための講座
第19回 採用諸資料と「OJT」について(2) ー具体的事例と展開ー
今回は次の3点を中心に述べてみたい。
(1)採用諸資料の具体的提示。
(2)「キャリア予測」の問題。
(3)「OJT」展開の流れ。
(1)の集約は既に述べた採用基準によって作成し、「面接所見」は、それに基づいて、私の所見を提示した。(3)展開の流れは構造図としてまとめてみた。先ず、(1)の事例「A・B」を次に示す。
事例(A)面接担当者の所見
全体として「線の太い」力強さを感じた。質問には直感的に「即答」するタイプで、頭の回転の速さが読み取れる。
全体として次から次へという調子のよい展開で、慎重性、細かい点への配慮には欠けるようだ。
その強い口調から、対人交流の面に若干の懸念が感じられる。
行動力は強力だが、「浅慮で性急さ」が推定される。入社後の実行プロセスで、多少の失敗があるのでは―。人柄は明るく他から好かれる印象だが、自己主張の強さとのバランスをチェックする。「キャリア予測」としては、広範囲における第一線活動型としたい。主導的パワーを発揮する「中核的人材」を想定したい。「全社的ビジョン」にも合致しているように考えられる。
事例(B)面接担当者の所見
やや「内向的」な印象を受けた。しかし面接では安定した態度がみられ、しっかりした受け答えであった。全体として慎重さが目立ち、積極的な覇気には乏しいであろう。
人柄としては素直で、「いい加減」な応答は全くみられなかった。頭の切り換えは速くはないが、集中力にはすぐれるようだ。
質問にはよく耳を傾け、上司には忠実な人材ではないか―。仕事の面でもじっくり取り組むことが期待される。
「キャリア予測」としては、どちらかというと「定型指向」を主としたい。慎重さを生かし、じっくり取り組む、専門職、スタッフ職などの中堅的人材を予測したい。
以上の「キャリア予測」は、本人の希望している仕事、目標などを「エントリーシート」等々と照合してみることは当然の事だ。いずれにしても、入社時点での仕事内容との「リアリティ・ショック」を小さくすることがポイントである。この点は入社後の「ジョブローテーション」による育成効果を左右する問題ともなる。
上司との「リアリティ・ショック」や、社内風土なども悩ましいテーマだが、ここではふれない。しかし次に述べるように、「OJT」展開の流れの中で自ずからハッキリしてくるテーマとなるであろう。
次にその展開図を示してみる。
この「OJT」サイクルの、(A)コースは全体の基軸となる。(B―C)コースは再評価という「共同作業」実践のサイクルとなる。又、この流れによってOJTの「指導者不足」という課題を補うコラボレーションともなるであろう。
いずれにしても、採用人材の「初期段階のOJT・配属」が、早期戦力化の第一歩となることを改めて自覚したい。
人事制度の問題もあるが、「人材の質」は、今の経済情勢から避けて通れない核心となるからである。
インサイト No.20
2009年5月20日