私の体験したディズニーマジック〜感動を呼ぶリーダーシップ〜
定期的に開催しております「ヒューマンキャピタル勉強会」も本年2回目となりました。これまでの勉強会は、各企業の経営者、有名人事担当者の方をお呼びし、さまざまな経験談を踏まえて採用をテーマとしたお話をしていただいてきました。
今回は、「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」の著者である香取貴信をお迎えし、ディズニーランドでの経験をもとに今、採用現場でも課題となっている魅力ある会社作り、リーダーシップとはなんぞやと言ったところをお話していただきました。
有限会社香取感動マネジメント 代表取締役 香取 貴信 氏
■ 講 演
はじめに
冒頭、「お待たせしました!青い空白い雲、やってまいりました皆さんのボート、アマゾンアニー号です。改めまして皆さん、こんにちはー!」とこれまでの勉強会とは一味違った香取さんの元気いっぱいのジャングル・クルーズ船長の挨拶で始まりました。
これまで数十回に渡って「ヒューマンキャピタル勉強会」を開催してきましたが、今回ほど笑いが絶えず、盛り上がった勉強会は初めてでした!香取氏の人柄、雰囲気に吸い込まれていった勉強会のエッセンスをどうぞご覧ください!
第一部:私の体験したディズニーマジック・感動を呼ぶリーダーシップ!!
【社員のモチベーションを上げる要素】
アルバイトであろうが、社員であろうが自分たちの意見を会社が尊重してくれたり、聞いて反映してくれることによってモチベーションは上がると思っています。
【活発な意見の出る会議にするために】
会議の場でリーダーが醸し出す雰囲気で会議の内容はガラリと変わる。「よし!意見を出せ!」と緊張感を漂わせたまま会議を進めるよりも、リーダー自らがちょっと的外れた意見や、笑いを少し入れた話を出し、和んだ中での会議の方が活発な意見は出てくる。そして、ちょっと場違いな意見が出ても良い!そこから素晴らしい創造や企画が生まれることが多い。
【お客様満足を高めるために】
どんな会社もお客様満足を高めていかなければなりませんが、その前提にあるのは従業員満足です。従業員の人たちの心の状態が良い状態でなければ、、お客様を満足させることは難しいと考えています。
【面接に来る人もお客様】
ディズニーランドの採用は、、面接に来られる応募者も「お客様」という気持ちを持って接しています。ですから、採用となっても、不採用となっても「面接に言って良かったなあ!」「楽しかったなあ!」と思っていただけるように面接官の衣装をディズニーで利用しているものをそのまま使ったり、会場にディズニーの写真を貼ったりして工夫しています。
【名札・見習いの扱い】
名札を取り入れている会社で社員のモチベーションを保つために、実は名札ってとても大切です。例えば、ちゃんと刻印した名札を使わずにテプラシートで作られた名札を使うとモチベーションは下がってしまいますので、良いものではないと考えます。
【朝礼と終礼の大切さ】
一日の業務の中で朝礼と終礼はとても大切です。朝礼では、個々のモチベーションを上げる為にプラス要因をどんどん伝え、マイナス要因の話は個別に話している。終礼では、一日でできたトゲを抜く作業をしています。お客様にお叱りを受けたり、先輩社員から怒られてできたトゲはあまり奥に入り込まないようにできるだけ早く抜くようにしています。
☆一言ポイント☆人間には、心の壺があるそうです。その壺の中には、プラス要因のものとマイナス要因のものが一定量入っており、プラス要因が外から入ってくると壺の中のマイナス要因が外に抜け、マイナス要因が入ってくるとプラス要因が出て行くようになっています。ですから、プラス要因をどんどん与えていけば、心の壺はプラス要因で満たされ、モチベーションが上がったり、自発的行動が見えてくるようになります。
【リーダーの評価】
ディズニーランドでのリーダーの仕事では、もちろん業務をちゃんと遂行させることや指導といったこともありますが、最も重要な位置づけだったのは、部下がちゃんと休日なり有給を取れているか。または、過度な残業をさせていないか、でした。ですから、有給なり休日をちゃんと置づけだったのは、部下がいると人事部からリーダー宛に「休みを取らせるように!」といった連絡が入るようになっています。これは従業員の衛生・安全秩序を守るなのです。
【夢を壊さないディズニーキャラクターたち】
ディズニーランドには、お客様も従業員もお客様という考えを持っています。ですから、アルバイト採用が決まり、入社時に名札を手渡ししてくれるのはミッキーです。また、退職する時も「今日が最後だね」と肩を叩いたりしてくれるのもミッキーやディズニーキャラクターたちです。ある時バレードで、あるキャラクターが倒れた時、そのキャラクターは途中で退場することなく社員に抱えられながらも最後まで参加しましたし、専用の救急車に乗り込むまでかぶりものを脱ぐことはありませんでした。今でもそうですが、どのキャラクターを誰が担当しているのがなんて誰もわからないようになっています。夢を壊してはいけないのですね。
【最大の従業員満足とは?】
「尊敬できる人が自分のチームにいるかどうか」というところです。尊敬できる人がいると休みの次の日でも会社にいきたくなります。その人に会いたいんです。会って自分を認めてもらいたいんです。最大の従業員満足は、「尊敬できる人がどれだけ自分のチームにいるか」だと思います。ですから、ディズニーランドの場合、物凄くリーダー育成に力を入れていました。ちなみに尊敬できる人とは、尊敬できる人をたくさん持っている人です。尊敬できる人を持っている人は、他を素直に受け入れ、謙虚に学び実践し、成長しています。私も常に心がけていることです。
第二部:香取貴信氏と当社取締役甲野文彦との対談
第二部は、香取氏と甲野の対談形式で参加された皆様から寄せられた質問に答えていただきました。
Q.ディズニーランドの面接・教育は厳しいように見え、アルバイト経験者を正社員で採用しようとしたら適性検査の結果が思わしくなかった。実際の面接はいかがなんですか?
香取「基本的には来る者拒まずです。皆さんが想像されるほど厳しくはないと思います。」
Q.ディズニーランドには社内評価(昇進、昇給)のような制度はありますか?
香取「賞金を渡すなどの評価制度はありません。その代わりに『スピリット・オブ・東京ディズニーランド』という表彰制度があります。この制度は、従業員が一人一票を持ち、一年間で一番頑張ったと思われる従業員に投票します。そして、投票によって選ばれた数人は『スピリット・オブ・東京ディズニーランド』としてシンデレラ城の前でミッキーから表彰を受けることになっています。受賞者は名札にシルバーピンが付いていますので、今度ディズニーランドに行かれた方は、探してみてください!」
Q.香取さんが最近受けたサービスの中で印象に残ったサービスはありましたか?
香取「マクドナルド。昼どきの忙しい時に百貨店のフードコートにあるマック子供のためにポテト一個買いました。ところが出来たてのポテトがなかったため、あとで持ってきてくれるというのです。そして、数分後、出来たてのポテトを素敵な笑顔といっしょにわざわざ席まで持ってきてくれたんです。普通、昼どきの忙しいとき、しかもフードコートならポケベルみたいのをもたされ、出来たら音を鳴らして呼ばれるのに...
。わざわざポテト一個を私の席まで持ってきてくれた。当たり前のことなのかもしれませんが、私にはとても印象に残るサービスでした。」
インサイト No.13
2007年8月1日